電車内でいつも優しい人々に助けられて、なんとか母親やっています。
よく論争が起きている赤子とベビーカー問題。
私も独身時代は毎朝毎晩満員電車に揺られていましたので、ベビーカーや、スーツケースで混んでいるところに入られて足を踏まれたりすると、イラっとする気持ちはわかるんですよね。
しかし、今まで他人事でわかった気になっていても、自分の立場になってみないとわからないことって沢山。
私は車がないというか免許もなく、主にベビーカーで行動しています。1歳を超え自分でヨチヨチ歩けるようになり、言葉はまだ話せない分泣いて自己主張も強くなってきた息子。電車ではいつも肩身が狭く、ベビーカーはできるだけ小さくなるように、折りたためる時は折りたたみ、ラッシュにかさならないように、通路を邪魔しないように、一番には泣かせないようにとあの手この手で気をつけています。しかし毎回うまくいかず、どっと疲れてしまいます。
つい先日のことです。息子連れで久しぶりに会う友人の家にお邪魔しました。
ランチの予定でしたが、10年ぶりの友達とも再会し、また息子は友達の子ども達とも夢中に遊び、夕方にはウトウトと寝てしまいました。起きるのを待ってから帰ろうとしたらすっかり遅くなりました。逆にラッシュを過ぎたくらいのほうがいいかと悠長に構えすぎて9時くらいになってしまいました。
金曜日です。
もう結構いい時間だし、いいかげん帰宅ラッシュはもう過ぎて・・・いないですよね、やっぱり。
少しでも空いている車両に乗ろうと何本か見送ったものの全然乗れず、でも帰らないわけにはいかないので、優先席付近に思い切って「えいやっ」と乗り込みました。
息子はウトウト眠そうにしていたのでそのままベビーカーにのせていたのですが、眠い上にぎゅうぎゅうづめで空気も悪いため、ぐずって抱っこをせがみ出しました。え、今ーー?無理だよーと思ってもさらに激しく泣きそうになっています。
しょうがない、満員電車でグラグラ揺れながら、片手で10キロ赤子を抱っこ、片手でベビーカー。目の前の優先席はいっぱい。捕まるところもなくて、もう私自身踏ん張るのに必死です。
ベビーカーたたみたいけど無理、この状況。赤子は抱っこでも落ち着かず、じゃぁベビーカーに降ろそうとするとさらに泣きぐずっています。
う、うわー最悪だ・・・完全に寝てから乗れば良かった。いや、やっぱり午後5時前に帰るようにすれば良かった・・・私も、よくあることとはいえ、針のむしろの気分でいました。
そこに、窓際にいたおばあさんが声をかけてくれました。「あなたこっちへいらっしゃい、ベビーカー持っていてあげるから」と。
ドアのはじの、寄りかかれる位置です。
そ、そんな。あなたこそ優先席に座るべき人なのに。しかもベビーカーは不安定だし申し訳ない!と思いつつ、「いいから、私は平気よ」という言葉に甘え「すみません、ありがとうございます!」とはじに寄らせてもらいました。「眠たいのね、よしよし」と息子に声をかけてもらい、奇声を上げて、もがきだしていた息子も少し落ち着きました。
しばらくすると、優先席の一つが空きました。おばあさんが声をかけてくれました。「あなたお座りなさい、座ったら落ち着くかもしれないし。」「え、あ、すみません、ありがとうございます!」おばあさんが声をかけてくれたお陰で、誰も座ろうとしていません。ご好意に甘えて座ることにしました。おばあさんが少し離れたところでベビーカーを持っていてくれています。ありがたい〜。
座っても、その場で立ってみても、息子は寝ぐずりもあって手すりによじ登ろうとしたり、もがきまわり、泣いて暴れて全然落ち着きませんでした。
私はあーでもないこーでもないとなだめて焦っていました。おばあさんが降り際ベビーカーを私の眼の前においてくれました。「ありがとうございました・・・」
その後はもう、とにかくトントンしたり、上下に揺らしたり、ミルクやお菓子で釣ろうとしたり、歌を小声で歌ってみたりやれるだけのことはすべてしていたのですが、子どもはもう寝る前の断末魔とばかりに泣きさけび出しました。車内中の空気が、「あーーーーうるせー」っとなっている気がします。一駅一駅がものすごく長く感じます。
心の中で「ひぃーもう勘弁してくれよーこっちが泣きたいよ」と叫んでいた時。
ちょっと酔っ払った壮年男性が、「いいんじゃないですか?泣かせておいて」と、車内中に聞こえそうな大きな声で話しかけてきました。
え、この人酔っ払っているのかな?
車内中に響く大声です。
壮年男性「子どもは泣くのが仕事でしょう、お母さんが焦るとそれが伝わってもっと泣いちゃうんでしょう」
そ、そうなんですよ・・・。
「赤ちゃんは日本の宝ですよ。その宝物を育てているんだって、お母さんはもっと誇っていいんですよ。堂々と泣かせておいていいんです」
で、でもすみませんうるさくて・・・
「泣かせておいていいんですよ」
「もし文句言う奴がいたら、私が言ってやりますから」
そうか、この人酔っ払っているようだけど、車内中の乗客皆んなに聞こえるように呼びかけているんだ・・そのためにこんなに大きな声で話してくれているんだ。
「そうでしょう?」と、隣の学生にも問いかけ、ちょっとうるさそうにしてそうだと思った学生も「そうですね、そのとおりです」と頷いていました。
私は注目を浴びて恥ずかしいのと、混んでいる時間に乗ってしまった後悔と、ありがたい言葉をかけてもらって嬉しいのと入り混じった気持ちで、もう何度も繰り返し「すみません、ありがとうございます」というので精一杯でした。
混んでいる時に限って、最悪のタイミングで泣き出してしまう息子。イヤイヤ期にさしかかって自己主張も強く、うわぁぁーってことばかりやってくれます。私の中で、「もう本当いい加減にしてくれー!」ってなることしょっちゅうです。でも、産まれたばかりの頃は、本当に儚く小さく弱々しく、神様から大事な大事な宝物を授かったのだ、大切に大切にしなければという気持ちでした。そうだった、息子は本当に貴重な存在なんだった。私だけのではない、皆んなの宝物なんだな・・・。と改めて思い直しました。
車内中の空気を変えてくれて、私にも大切なことを思い出させてくれた酔っ払いのおじさんと、優しいおばあさんに、とても感謝しています。
電車ではいつも迷惑をかけていて申し訳ないけれど、こういう人々の優しさに救われています。
PS もちろんこれに懲りて、その後ははやむを得ない場合以外絶対に!ベビーカーで帰宅ラッシュに乗らないようにしています。